外壁タイル及びモルタルの浮き・剥落の原因

建物の外壁タイル・モルタルは剥落する危険があります

外壁タイル及びモルタルの「浮き」は、躯体コンクリート、下地モルタル、張り付けモルタル、タイルにおける各構成材の界面の接着不良等で起こります。

浮きの原因は大きく分けて3つ

  1. 自然発生的な浮き
  2. 施工不良的な浮き
  3. 躯体ひび割れ等の影響による浮き

...

...

1.自然発生的な浮き

〇 自然発生的な浮きの原因

①地震などの天災

建物が揺れた際の変形により生じた浮き

②経年劣化

外壁仕上げ材料の経年的な劣化に伴う接着力の低下による浮きや、コンクリート中性化などによるコンクリート強度の低下に伴うひび割れ、鉄筋の錆等の影響により生じた浮き

③ディファレンシャルムーブメント

温湿度変化による外壁構成材のひずみ差により生じた浮き

ディファレンシャルムーブメント

モイスチャームーブメント

モルタル目地等から侵入する雨水による乾燥と湿潤の繰り返しにより発生する伸縮挙動

サーマルムーブメント

各材料の温度の変化により発生する伸縮挙動

  1. 地震などの天災による浮き・剥落
    躯体コンクリートにモルタルやタイル、石材などの仕上げ材を張った建物は、地震などで激しい揺れが起きると、建物にひずみが生じ、仕上げ材がコンクリートの動きに追従できず、ひび割れが生じたり、浮きの発生、さらにはこれらの仕上げ材が剥落することがあります。
  2. 経年劣化・・コンクリートの中性化における鉄筋の爆裂(爆裂による浮き・剥落)
    鉄筋コンクリートの内部の鉄筋は、コンクリートの強いアルカリ性(pH12~13)によって、腐食から保護されていて、かぶりコンクリート厚さが確保される場合は、通常条件下では内部鉄筋は容易に腐食することはありません。
    しかし、コンクリートのひび割れ等から雨水や空気にさらされることにより、コンクリートの表層部からしだいに中性化され、中性化が内部鉄筋に達すると、鉄筋の腐食が始まってしまいます。
    その後、鉄筋が錆びることで膨張してしまい、膨張を繰り返すことでコンクリートに浮きや欠損を引き起こし、最終的には剥落する可能性があります。
  3. ディファレンシャルムーブメント
    ディファレンシャルムーブメントとは、外壁タイル仕上げ部分に外気環境の影響による温湿度変化を受けた際の各材料の温湿度膨張係数の違いから、各構成材が異なった伸縮の動きをすること(相対ひずみ)を言います。
    外壁タイル仕上げ部分は、・躯体コンクリート・下地モルタル・張付けモルタル・タイルとなっており、それぞれ温湿度膨張係数が異なる材料で構成されています。外壁タイル仕上げ部分は日々変化する気温や天候にさらされており、ディファレンシャルムーブメントを長期間にわたって繰り返すことで、材料間に疲労が蓄積し、各構成材の界面で浮きが生じる可能性があります。ディファレンシャルムーブメ ントによって各構成材の界面に浮きが発生し、浮きはディファレンシャルムーブメントによって進行します。

...

...

2.施工不良的な浮きの原因

施工不良的な浮きの原因

① コンクリート表面に付着した型枠の剥離剤や汚れ、粉塵等の洗浄不足

② コンクリート表面の、目荒らしの未施工及び目荒らし不足

③ プライマーの未施工、ドライアウト、オープンタイム、養生期間の管理不足や不適切な施工

④ 圧着セメントの充填・圧着不足

⑤ 伸縮調整目地の目地幅や接地間隔の不足、打ち継ぎ部とタイル張りのずれ等

  1. コンクリート表面に付着した型枠の剥離剤や汚れ、粉塵等の洗浄不足
    コンクリート打設の際、一般的に型枠の脱型を容易にするため型枠剥離剤が用いられています。油脂系の剥離剤を用いた場合は、コンクリート面に剥離剤が残り接着不良を生じる事があります。また、サンダー等で目荒らしをする際に出る粉塵や汚れ等が付着している場合も接着力の低下の原因となるため、タイルの張り付け前に下地コンクリート面の洗浄は不可欠です。
  2. コンクリート表面の、目荒らしの未施工及び目荒らし不足
    近年、地球環境問題や廃棄物問題への対応として、塗装合板が使用されることが多くなりました。しかし、型枠脱型後のコンクリート表面は平滑で、そのままの状態でタイルを接着しても剥がれやすいという弱点があるため、モルタル、タイル張り工事においては、コンクリート表面に目荒らしを行い、接着界面での剥離事故を防止する必要があります。
    目荒らしの未施工や目荒らし不足などは、張り付けモルタルの付着が悪く、接着強度が得られにくいため、コンクリート界面からの浮きの原因の一つとなっています。
  3. プライマーの未施工、ドライアウト、オープンタイム、養生期間管理不足や不適切な施工

    ドライアウト
    セメントの硬化不良の一つ。モルタルなどの凝結硬化過程で、水分が下地の急速な吸水や直射日光を受けて短時間に蒸発してしまう事で、正常な凝結硬化ができなくなる状態です。
    ドライアウトの予防策として、下地に事前に散水する等といった処置が必要で、ドライアウトしたモルタルは、正常な凝結硬化をしていないため強度が出ません。

    オープンタイム
    主にゴム系の接着剤、ホットメルト型の接着剤を使用する際に用いる言葉です。
    接着剤を塗布してから、材料同士を実際に接着させるまで開放しておく時間のことで、オープンタイムが経過してから、両材を接着します。材料の両面に接着剤を塗布し、表面が適度に乾燥する程度のオープンタイムを取ってから張り合わせると、仮止め不要の初期強度に優れた接着ができます。しかし、一定の時間を過ぎると流動性・粘りが悪くなり充分な接着性能が発揮できなくなります。

    養生期間の管理不足
    タイル張り仕上げを施工するうえで、コンクリ―ト打設後や、モルタル塗り時にそれぞれ決められた養生条件及び養生期間を確保する必要があります。
    養生が十分でない場合には材料の品質は確保されず、ひび割れや浮きの原因となってしまいます。
  4. 圧着セメントの充填・圧着不足
    タイル張りの際には、タイルの裏足(裏側)に張付けモルタルや圧着セメントが確実に充填、圧着がされていない場合、タイルの裏足に空隙ができ、タイル浮き及び剥落の原因になってしまいます。
  5. 伸縮調整目地の目地幅や接地間隔の不足、打ち継ぎ部とタイル張りのずれ等
    誘発目地、打継目地はコンクリ―ト、モルタル、タイルの同一箇所に打つことで、建物からモルタルやタイルに与える振動や収縮を吸収することができますが、コーキング部分がずれていると、振動や収縮をうまく吸収したり、逃がしたりすることができなくなり、タイルの浮きの原因となってしまいます。

...

...

3.躯体ひび割れ等の影響による浮き

躯体コンクリートのひび割れは、乾燥収縮や地震などによる建物の揺れ、不同沈下によるものなど、様々な要因で発生します。躯体コンクリートに生じたひび割れの影響によって建物の表面に張ってあるタイルに欠損が生じたり、躯体と張付けモルタルの界面、張付けモルタルとタイルの界面に浮きを生じさせることがあります。建物の梁や柱、開口隅角(窓の角や手すり壁スリット部など)等にみられ、ひび割れとタイルの浮きが重複して発生するのが特徴として挙げられます。

Copyright (C) 2022 Jfp Corporation. All Rights Reserved.